まず「余裕のあるわたし」になる。初めから他人のためなんて無理だから ―丸山 奈緒美

まず「余裕のあるわたし」になる。初めから他人のためなんて無理だから ―丸山 奈緒美 ゆるむ練習

各分野の専門家から、オス化女子がメスに戻るエッセンスを学ぶコーナー。今回は、オーガニックやエシカル、SDGsにこだわった商品を扱うセレクトショップ「Birthday自由が丘」オーナー丸山奈緒美さんに話を聞きました。想いを込めて伝えても、なかなか商品を手に取ってもらえない挫折。店頭で多くの女性を接客して気付いた、現代女性に必要なものとは?

Birthday自由が丘オーナー 丸山 奈緒美さん
茨城県生まれ。薬学部を卒業後、新薬の開発に従事。3年目に起業家へと舵を切り、薬剤師の仕事を経てエシカルブランド立ち上げ。2023年6月にセレクトショップ「Birthday自由が丘 」オープン。自身のアトピー経験からオーガニックコットンの下着開発や、真の健康知識を発信する「美人塾」主催など、女性のために広く価値提供を行う。

生産者の声に触れ、湧き上がる想い

仲間からエシカルブランドの立ち上げに声がかかり、事業に参画した丸山さん。そこで扱うことになったのが、オーガニックやヴィーガン、SDGsにこだわった商品だった。元々アトピーだったこともあり無添加のものを選ぶ傾向はあったが、環境問題や未来の地球について強く関心を持ったのは、この仕事がきっかけだったという。

バイヤーとして商品の選定や仕入れを行うようになると、生産者と直接話す機会が増えていった。

「こういう業界の人って本当に良い人が多くて。だいたいみんな自然の多い所に住んでいるから、海にプラスチックゴミがいっぱい落ちていたり、動物が人間が捨てた網に引っかかって傷付いたり、カモメの翼にゴミが絡まって飛べなくなったりっていう、私たちがどこかで見聞きしたような状況を、リアルに見ているんですよ。」

ポイ捨てや放置されたプラスチックごみは、河川などを通じて海へ流出し、海洋プラスチックごみとして、海岸にたまったり水中を浮遊したりする。動物が餌と間違えて食べてしまうことや、身体を傷つけたりすることも問題となっている。※イメージ画像


「例えば、日焼け止めの成分の中には珊瑚を死なせてしまう成分もあるんです。それをリアルに見てきた人たちが、海と珊瑚を守りたくて、珊瑚にやさしい日焼け止めを作ったりしてるんですよね。その日焼け止めは、サーファーが使っても、海に流れても、珊瑚を死なせない成分でできているんです。」

商品ができた背景を知れば知るほど、多くの人に伝えていかなければと熱い想いが込み上げてきた。

理想とのギャップ。みんな自分に余裕がない

『素敵な考え方ですね。でもちょっと高いかな…。』

店頭で実際に商品を案内してみると、そう言われてことごとく断られた。

「特にフェアトレードなんて、立場の弱い生産者や労働者に公正な賃金を支払いましょうという考えで、安く人を雇わないから売価が高くなってるわけですよね。環境問題も、今は自分が海に入れるから良いけど、10年後、100年後の子どもたちが海に入れなくなるのって嫌じゃない?そういう話の理解はしてもらえた。でも、未来のまだ起きていない事を考えるなんて他人事だし、ましてやそこに自分がプラス500円とか払って買おうという所まで、意識が行かないんですよね。理由は全部、『自分に余裕がないから』なんですよ。」

丸山さんが現場でお客様を見て、リアルに感じたことだった。

「自分の生活費で精一杯だったりすると、お金を人や未来のために使おうってなかなか思えないですよね。それに、自分が忙しくて疲れてると、他人のことにまで意識が向かないのも分かるんです。自分も昔はそうでしたから。」

自分に「お疲れ様」と言う時間を

丸山さんの店で扱っている商品の中に、粉の洗顔料がある。あずきと米ぬかと黒糖の3つだけで作った、きな粉のようなテクスチャーの洗顔料だ。

ゼロケミカルオーガニック うるおう洗顔粉。原材料があずき、米ぬか、黒糖のみで作られた洗顔粉。


「その成分って、動物が食べても大丈夫だし、海に流れても大丈夫でしょ?本来そういうもので汚れって十分落とせるんですよ。ただしその洗顔料を使う時は、水でこねる、というひと手間をしなきゃいけない。つまり、忙しくて疲れていてストレスのある状態だと、そういう事をする余裕がないですよね。本当に一息つく時間がない、現代女子は。あっという間に1日が過ぎていきますよね。」

「だからこそ、そういう粉をこねる時間を使って、自分を愛するとか、自分に感謝をするとか、今日もお疲れ様って思う時を過ごしてほしい。その自分に愛情を向ける時間が、余裕を持つことになると思うから。だからあえて粉の洗顔料を置いてるんです。」

水またはぬるま湯で少しずつ練りながら滑らかなペースト状にし、両手のひら全体に広げ、お顔に優しくプレスして使用する。

「余裕のあるわたし」が先、そのあと他人や地球のことを

エシカルのコンセプトを届けるには、自分に余裕のある人を増やす必要がある。現場での接客を通してそう痛感した丸山さんが、自身の店として構えた「Birthday自由が丘」では、第一ステップとして「余裕のあるわたし」をつくることを掲げている。

かゆくならない下着や、痛くならないイヤリングをはじめ、女性がつい我慢してしまうちょっとしたストレスから開放するアイテムを選び抜いた。

Birthday自由が丘、店内の様子


「今この瞬間の、痛みとか我慢とかストレスを開放して、余裕のある状態になったら、前に進もうと思えるから。そうやってアクティブな女性をまずは増やしたいですね。そういう状態になって初めて、自分のことだけじゃなくて、他人のことや出会っていない他国の人々、未来の地球のことを考えられると思うので。」

「初めから他人のことを考えるなんて無理なんですよ。まずは自分を愛したり、自分を大事にすることが先ですね。」

そう話す丸山さん。地球環境や他国の人々が抱える問題に心を打たれ、より良い世界をつくりたいと思った時、結局行き着いたのは「自分を大事にすること」だったのだ。

この記事を読み終えたら、あなたもまずは自分に「お疲れ様」と声をかけてあげてほしい。他人を思える、さらに素敵なあなたへの第一歩になるはずだ。

店舗情報
Birthday自由が丘
https://bir-thday.tokyo/

東京都目黒区自由が丘2-7-19 1F
TEL :03-6421-2065
営業時間:12:00~18:00
定休日 :火曜日、水曜日
東急東横線 自由が丘駅 徒歩7分
東急バス自由が丘学園バス停30秒